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3,もう一度

「なぁ、もう一回」
「やだ」
「んなつれないこと言うなよ。な?」
「嫌だったら」
 僕は牽制するように睨み付けた。こちらを組み敷くようにして見下ろしている、友人の顔が情けなく歪む。だが、こちらを離してくれる様子もない。
「……あ」
 少し古びたノイズを含んだ、チャイムの音が響く。その音が、救いのように思えた。
「残念。時間切れだ。講義が始まる」
 僕は、そう指摘した。すると、彼はさらりとこう返す。
「次は臨時休講、だろ」
「え? マジで?」
「俺がそう決めた」
 一瞬、考えこむ。だが、すぐにその意味を察した僕は、思い切り力を込めて突き放した。
「それは自主休講っていうんだろっ!」
 火事場の馬鹿力という奴だろうか、それとも怒りが勝ったのか。体格的にも、絶対に敵わない彼を突き飛ばすことに成功した僕は、すかさず起き上がって距離を取った。
 彼はうめきながら、恨めしげにこちらを見上げる。
「だって、まともに出ていたら、間に合わないだろ、この課題」
「だから、コツコツとやっておけと言ったじゃないか。とにかく、僕は講義に出るからね。もう手伝わないよ」
「え、じゃあ、これは?」
 一転して、小犬のようなすがる眼差しを送ってくる奴に、僕は手を振ってやった。
「一人でやってろ」
 それこそ、満面の笑みで。
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